日常と停滞(散らばる付箋、静かな呼吸)
机の上に、色あせた付箋が並んでいる。
「パーマリンク設定」「FVの高さ」「フォームの通知メール」
書いたのは私、瑞希。
29歳、事務職。
夜と週末にだけ、Webデザインを学んでいる。
HSP気質の私は、通知音や蛍光灯のうなりさえ気になって、作業の手が止まる。
小さなことが胸の奥に積もって、呼吸が浅くなる。
YouTubeで見つけた“続きは次回”の動画は、次回が来なかった。
Udemyの15時間コースは、6時間目で止まった。
「あと少し」のところで、私はいつも納品レベルの壁の前に座り込んでしまう。
フォームが送れない。
スマホのハンバーガーが開かない。
ヘッダーの文字色が背景に沈む。
——“最後の数歩”が、いつも怖い。
60分の“一本線”
雨の音が柔らかく窓を叩く夜、私は“60分で見てマネするだけ”という講座に出会った。
正直、半信半疑だった。
でも、ページをスクロールする手が止まらない。
Arkhe、Local、WPForms。
聞いたことのある名前が、一本の線になって並んでいた。
「環境準備 → テーマ導入 → トップ構築 → 問い合わせ → ナビ」
この“実務の一本線”を、60分で通すらしい。
私の胸の奥で、カチリと音がした。
環境構築
土曜の朝。
コーヒーの湯気と、窓の外の淡い光。
私はPCを開く。
講座の画面をスマホで流し、PCで同じ手を動かす。
最初の試練:Local がうまく起動しない。
胸がきゅっと縮む。
HSPの私には、この“うまくいかない瞬間”の圧が強い。
でも動画の中で、講師は落ち着いて言った。
「うまくいかなければ、新規サイトを潔く作り直すのがいちばん早いですよ」
私は“Sites”に mizuki-portfolio-2025-05-18 と名付けた。
言語、タイムゾーン、パーマリンク、サイト名。
初期チェックリストを、付箋に書いて一つずつ潰す。
——静かに、でも確実に。
気づけば、私の画面にまっさらなWordPressが立ち上がっていた。
仲間と道具(Arkhe/Local/WPFormsを手に)
Arkhe をインストールして有効化。
ロゴ、アクセントカラー、アイコン。
講師は言う。
「最初は、子テーマを作らず、カスタマイザー中心で必達構成を作りましょう」
私の頭の中の霧が、少し晴れた気がした。
必要最低限で“まず完成させる”。
それが、私に欠けていた。
セクションを立ち上げる
ファーストビューに短いキャッチと動画。
「私たちについて」に、写真と数行のテキスト。
サービスはカード型で3つ。
下部にはメッセージと、誰が何を大切にしているか。
WordPressのブロックを積む指先のリズム。
集中できると、周囲のノイズが遠のく。
HSPの私にとって、その静けさは“守られている”感覚だ。
画面の中に、誰かに渡せる形が立ち上がっていく。
フォーム導入とテスト
WPForms の登場で、手のひらが少し汗ばむ。
通知メール、スパム対策、サンクス文言。
ここで止まるのは、いつもの私だ。
でも今日は違う。
講師の声が、要点に絞って背中を押す。
- 通知先は 自分のGmail+クライアント の2系統に。
- reCAPTCHA v3 を有効化して、最低限の防御を。
- 送信後のメッセージは、“提案コピー”として小さくブランドの声を添える。
テスト送信。
プッシュ通知が震え、メールアプリが開く。
——届いている。
自分の名前宛に、確かな着弾。
胸の中心が、少し熱くなる。
私は小さく息を吐いた。
スマホ最終チェック
最後の壁は、スマホ。
アンカーリンクでセクションに飛ぶと、ヘッダーでタイトルが隠れる。
ハンバーガーが時々、閉じない。
私は実機で確認しながら、ブラウザのDevToolsも並べた。
講座のメモに書かれている。
- スクロールオフセットでヘッダー被りを回避。
- ハンバーガーの開閉は イベントの競合をチェック。
- ヘッダー文字色は背景との コントラスト比 4.5:1 以上。
数値を変え、余白を調整し、もう一度タップする。
カチ、スッ。
メニューが、気持ちよく閉じた。
セクションの見出しも、ちょうどよく目に入る高さで止まる。
画面の向こうで、小さな世界が“意図どおり”に動いている。
私は思わず笑ってしまった。
ミニ納品、そしてメッセージ
その日の夜、私は想定クライアント向けに ミニ納品 をした。
URLと、簡単な変更点のメモ。
チェックリストを添え、フォームのテスト結果も記録する。
ほどなくして、返信が届いた。
「スマホでも見やすくて、問い合わせの導線がわかりやすいですね。
これ、実案件でお願いしてもいいですか?」
心臓がドクンと鳴った。
“納品レベル”の壁の向こう側から、初めて届いた声だった。
テンプレ化と再現性
私は、今日の工程をテンプレートに落とし込んだ。
- 初期チェックリスト(言語/TZ/パーマリンク/サイト名)。
- 必達ブロック(FV/About/Service/Message)。
- 問い合わせ導線(WPForms設定とテスト手順)。
- ナビ標準(アンカー/グロナビ/ハンバーガー検証)。
- 最終チェック(実機+DevTools、色コントラスト)。
この順番でやれば、また同じ場所に辿り着ける。
“最後の数歩”が、もう怖くない。
静かな自信
日曜の夕方、窓辺の光が柔らかく部屋を撫でる。
湯気の消えたマグカップ、整然と並ぶ新しい付箋。
mizuki-portfolio-2025-05-18 のフォルダ名を見て、私は小さく頷く。
私は、できる。
HSPの私でも、静けさの中で積み上げる方法を見つけた。
「提案 → 制作 → 納品」
この小さな循環が、私の未来を静かに押し出していく。
これからの私へ
次は、実案件のヒアリングから始めよう。
ブランドの色を、フォームにも、メニューにも通す。
サンクス文言には、クライアントの小さな哲学を一行。
Arkhe の上で、必要最低限から始め、必要になったら広げる。
それが、私の“怖くない成長”だ。
あのときの私に、言ってあげたい。
「完成体験」こそが、あなたを連れていく。
そして、あなたにも。
同じ壁の前にいる、まだ見ぬ誰かへ。
たった60分の“一本線”で、納品レベルの向こう側へいこう。
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