「自分にしかできないこと」って、ほんとうにあるのかな?
朝、コーヒーを淹れたあと
カーテン越しの光がふわっと差し込んで、部屋の空気がやわらかくなった。
PCを開く前のこの時間が、私はなんとなく好きだったりします。
音もなく過ぎていくような静けさの中で、
窓の外の空や、机の上に置いたお気に入りのマグカップに目をやったりして。
「今日はどんな一日になるかな」
小さくつぶやいてから、メールチェックを始めました。
ちょっとだけ、気になることがあった。
昨日のクライアントさんからの返信。
返信が来ないのが不安というよりは、
「提案、ちゃんと伝わってたかな?」って、じわっと心配になる。
そんなとき、
「もっと分かりやすく、はっきりと、強く言えたらよかったのかな」
なんて、自分をちょっと責めそうになるけれど。
でもそれって、私らしさなんだよなぁ、とも思う。
言葉にする前に、すこし立ち止まってしまうのも。
相手の感情を考えすぎてしまうのも。
空気の「ふんわりした揺れ」に気づいてしまうのも。
私はフリーランスのWEBデザイナー。
独立して、もうすぐ2年になります。
「自分の好きなことで生きていけたらいいな」
そんな想いから始めたけれど、
実際の毎日は、好きなことばかりじゃなくて。
SNSで流れてくる「月商〇〇万!」みたいな投稿を横目に、
「なんだか私は、動きが遅いのかな」って思ってしまう日も、正直ある。
焦っても仕方ないって分かっているし、
私には私のペースがあるって頭では理解してる。
でも、
そう思えていても、
心のどこかがふわふわと落ち着かなくなるときって、ありますよね。
たとえば、提案に自信が持てなかった日。
あるいは、
「あなたのデザインって、ちょっとやわらかすぎるかな」って言われたとき。
それって、私の世界観が伝わらなかったってことなのかな。
それとも、伝え方の問題だったのかな。
答えのないまま、その言葉だけが
ふわっと部屋の中に残ってしまうこと、あるんです。
だけど、だからこそ。
あのときの「やわらかいデザインで癒されました」って言葉が、
とても、とても、心に沁みたりして。
「あなたの提案、じんわりと胸に届きました」
そう言ってくれたクライアントさんのことを思い出して、
ほっと涙が出そうになった日もありました。
まだはっきりとは言えないけれど、
もしかしたら私の「やわらかさ」って、
悪いことじゃないのかもしれないな、って。
むしろ、「やわらかくあること」が
誰かの心に寄り添っていたのかもしれないな、って。
そう思えるようになったのは、
ほんの少し前のことでした。
「自分らしさ」って、言葉にするとちょっとこわい
思えば、昔からそうでした。
人の表情のちょっとした変化に気づいてしまったり、
「その言い方、ちょっとトゲがあるな」って、
周囲が気にしないようなことに、ひとりで傷ついてしまったり。
学生のころは、よく「気にしすぎだよ」って言われた。
ほんの冗談のつもりだったんだろうなって、頭ではわかっていても。
言葉の端っこに残る空気みたいなものが、なかなか拭えなくて。
そんなふうに、小さな違和感を心のどこかに残したまま、
家に帰ってひとりで反芻してしまうことも、よくあったなぁって。
「HSP」という言葉を知ったのは、
ちょうどフリーランスになって半年くらい経った頃でした。
ひとつの案件を終えたあとの、ぽっかりした日曜日。
ふと見ていたSNSで、たまたまその言葉が目に入って。
「繊細さん」「感受性が強い人」「他人の気持ちに過剰に反応してしまう」
なんとなく、どれも自分に当てはまるような気がして、
その日、たくさん検索して、たくさんの記事を読んだのを覚えています。
「私だけじゃなかったんだ」
その安心と同時に、
ちょっとだけ泣いてしまった自分がいました。
でも、そこからすぐに「自分らしく」なれたかというと、そうでもなくて。
やっぱり、「それって武器になるよ」なんて言葉をもらっても、
どこかで「でも、繊細すぎる私は仕事向きじゃないのかも」って、
疑ってしまう自分もいて。
クライアントから返事が来るたびに、
「なにかまずいことをしたかな」って不安になったり。
Zoomの打ち合わせが終わったあと、
ひとり反省会をしてしまって、ぐったりしてしまったり。
「人に気を遣いすぎる自分」を
どう扱えばいいのか、分からなくなるときもありました。
でも、ある時、ふと気づいたことがあって。
あるクライアントさんとのやりとりで、
いつもよりも丁寧に、時間をかけてヒアリングをしたことがありました。
何度かメールを交わすうちに、
「私、人と話すのがあまり得意じゃないんです」と打ち明けてくれて。
「でも、あなたのメールは、なんだか安心できて。
はじめて、ちゃんと気持ちを話せた気がします」って言ってくれた。
そのとき、
「あ、そうか。わたし、こういう人に寄り添えてたんだ」って、
心がじんわりあたたかくなったんです。
それは、
たくさんの情報を一度に処理できるタイプじゃなくて、
一歩ずつ確認しながらじゃないと前に進めない自分を、
ずっと「弱さ」だと思っていた私にとって、
はじめて「やわらかさが、誰かの助けになる」という
小さな“確信”をもらえた出来事でした。
それから少しずつ、
「スピード感」や「トレンド」や「強い言葉」があふれる世界に、
自分を合わせすぎなくてもいいのかもしれない、と思えるようになってきました。
でも、それでもやっぱり、迷うことはあるんです。
この先もずっと、この働き方を続けていけるのかな。
私の“やわらかさ”だけで、本当に仕事になるのかな。
ゆらぐ自信と、積み重なる“ちいさな肯定”
ある朝、
カフェでPCを開きながら、
ふと、手が止まるときがあります。
メールの文面に迷ったり、
デザインのレイアウトに悩んだり、
「これで大丈夫かな?」という不安が、じわりと心に広がって。
たとえば、「納期」と「丁寧さ」のはざまで揺れるとき。
たとえば、「この価格でいいのかな?」と自分の価値を測ってしまうとき。
そんなとき私は、つい「他の誰か」を見てしまいます。
SNSで見かける、
「3日で10件受注しました!」とか、
「今月は過去最高益でした!」とか、
キラキラした数字や報告たち。
すごいな、って思う反面。
どこかで、心が少しだけ、きゅっとなる。
「私は、何を届けられてるんだろう?」
「このやり方、間違ってないかな…?」
答えの出ない問いが、
静かな店内に、ぽつんと置き去りになってしまうような気がして。
そんなとき、よく思い出すのは――
あるクライアントさんから届いた、1通のLINEです。
「あなたにお願いしてよかったって、今ほんとに思ってます。
一緒に作っている時間も、あったかくて安心できました」
そのメッセージは、どんな売上報告よりも、私にとって大きなご褒美で。
私のやわらかさは、
スピードでも、派手さでも、強さでもないけれど。
その人の話をていねいに聞いたり、
ひとつひとつの言葉をゆっくり選んだり、
心の動きを感じながら、じっくり寄り添ったりすること。
それって、もしかしたら――
この仕事をするうえで、とても大切なことなんじゃないかって。
少しずつ、
ほんとうに少しずつだけど、そんな“肯定”のかけらが集まってきて。
いつか、積み木みたいに。
自信として積み上がっていく日がくるのかもしれない。
それまでは、焦らず、あわてず。
今日も目の前の小さな「ありがとう」を、大切にしながら。
「繊細だからこそ届くもの」が、きっとある
ある日の打ち合わせで、クライアントさんがふと、こんなことを言ってくれました。
「なんか話してると落ち着くんですよね」
「他の人には言いづらいことも、つい話しちゃう」
その言葉が、
私の中で静かに、やわらかく響いてきて。
“落ち着く”って、
“つい話しちゃう”って、
きっと、それは「安心してもらえた」ってことなんだろうな。
私の仕事は、デザインをすること。
でも、ただ「かっこいいものを作る」だけじゃなくて、
その人が大事にしている“気持ち”を、言葉や色にすること。
だから、たくさん話を聞く。
相手が言葉にできないでいる思いや、
無意識に抱えている違和感を、
表情や声のトーンから、そっと拾いあげる。
それは、もしかしたら、
HSP気質の私だからできることなのかもしれないなって思ったんです。
周囲の空気の「ちいさな揺れ」に気づいてしまう自分を、
長いあいだ、うまく扱えずに戸惑っていたけれど。
それは「相手の感情にそっと気づける力」でもあったんだなって。
たとえば、
ちょっと言葉に詰まっていたときに「焦らなくて大丈夫ですよ」と声をかけたり。
「その言い方、素敵ですね」って、本人すら気づいていない魅力に目を向けたり。
そういう小さな関わりの中に、
「この人にお願いしてよかった」って思ってもらえる瞬間がある。
強く自己主張しなくてもいい。
たくさん売り込まなくてもいい。
“わかってくれる人”と、ていねいに関係を育てていく。
そういう仕事の仕方が、
ちゃんとあるんだって、ようやく実感できるようになってきたところです。
もちろん、
「このやり方で本当にいいのかな?」って不安になる日は、今でもあるし、
時には「もっと派手にアピールした方がいいのかも」と思うこともあるけれど。
でも、焦らずに、じっくり、ていねいに。
私の“感じる力”を、そのまま活かせる働き方を、
これからも見つけていきたいなと思っています。
少しずつでも、「私にしかできないかたち」が見えてきた気がするから。
「やわらかく、続けていける働き方」が、私を守ってくれる
この働き方を選んでよかったな、と思う瞬間があります。
たとえば、
雨の朝にお気に入りのマグカップでコーヒーを飲みながら、
静かな部屋の中で、自分のペースで一日を始められるとき。
あるいは、
ちょっと疲れた午後に、散歩がてら公園に行って、
ゆっくり手帳に思いを書き出したりする時間。
誰かの都合に合わせすぎずに、
自分の感覚や、心地よさを大切にできること。
それって、HSP気質の私にとって、
とても大きな安心材料なのだと、最近あらためて感じています。
もちろん、フリーランスには不安もあるし、
この先ずっと安定している保証なんてどこにもない。
だけど、それでも。
“自分のままで働けている”ということは、
何よりも心を支えてくれることだと思うのです。
「たくさんの人に届かなくてもいい」
「わかってくれる人に、ちゃんと届けばいい」
そう思えるようになってから、
少しずつ仕事が、しんどくなくなってきました。
そして、不思議なことに、
そう思えるようになってからの方が、
なぜか“ご縁”が増えてきた気がします。
「あなたの雰囲気に惹かれて」
「安心してお願いできそうだと思って」
そんな言葉をもらえるたびに、
私の“やわらかさ”が、ちゃんと届いているんだなって、
心がじんわり温かくなるのです。
これからもきっと、
不安になる日も、落ち込む瞬間も、なくならないと思う。
でも、
そのたびに思い出したいのは――
あのやさしいメッセージ。
あの、打ち合わせ後の静かな満足感。
あの、コーヒーの湯気が心をほぐしてくれる時間。
「わたしのままで、働いていいんだよ」
そう自分にやさしく言ってあげられることが、
この働き方で得た、いちばんの宝物かもしれません。
もし今、
「自分にしかできないことってあるのかな」って
立ち止まっている人がいるとしたら。
「大きな声じゃなくても、誰かにはちゃんと届いてるよ」って、
そっと伝えてあげたいです。
やわらかくて、繊細で、少し不器用かもしれないけれど。
そんなあなたの存在そのものが、誰かの光になっているから。
あなたのその感受性も、
その丁寧さも、
その迷いながら進む姿も、
きっと、全部。
大切にされていいものなんだと思います。
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